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和の美をまとう引き振袖『美麗』誕生秘話

想いが着物へ命を吹き込む

Feelings breathe life into the kimono.

恵理さんは「赤毛のアン」の翻訳者である村岡花子さんのお孫さん。長竹さんは、人間国宝の舞踊家さんたちに作品を提供なさる方。私なんかが付き合っていただけるのか不安でしたし、最初のお返事は「素人さんの絵で作るのは難しい」というものでした。でも、お目にかかった長竹さんは本当に優しい方で、私の下図を見るなり、「決まりごとにとらわれていないのが面白いと思います。作らせていただきます」と、即答くださいました。

そこからは、あれよあれよという間に、作業が進みました。職人さんが腕を鳴らして、着物に仕立てられるように下図を描きなおしてくださり、染色家の後藤猛さんが、心をこめ、手間をこめて彩色してくださいました。その工房が、私が長年過ごした新座の自宅からすぐ近くだったので、ご縁の不思議さにびっくりしました。着彩には本金箔を山ほど使ったので、「金箔が足りなくて、予算を超えて追加で取り寄せないといけません。費用はこちらでかぶるから、とりあえず約束した分の製作費を先に振り込んでくれませんか。そうでないと金箔が買えません」と、長竹さんが悲鳴の電話をくださるほど、この着物は贅沢に作られていったのです。そして、こんなに見事な着物に仕立て上げていただきました。



実はこの椿の引き振袖と一緒に、靖国の元帥等と椿を意匠に白無垢も制作いたしました。そちらは下図を画家・作家・チェリストの山口椿さんに下図の作成をお願いいたしました。「山口椿」というお名前を聞いただけで、椿山荘ゆかりの藤田男爵、山縣有朋公にゆかりのある「山口」県と「椿」が両方名前にあるのだから、もうこれはご縁でしょう。松山元信さんが、依頼を後押ししてくださいました。椿先生が描いてくださった下図の素晴らしい白無垢に関しましては、靖国神社にて初披露の後、後日配送の記念写真集に納めさせていただけたらと思っております。こちらもどうぞぜひ楽しみにお待ちください。



画家/作家/チェリスト 山口椿

1931年神田三崎町生まれ。イタリア国立美術アカデミアでオランダ派を専攻。シエナのサラチーニコレクションに花の細密画のセリーを描く。次いでロシアバレエのエトワールたちの等身大油彩を手掛け膨大な素描を持つ。一部が山田哲平教授のコレクションに。その傍ら、栄元水墨画をよくし、また墨技の連なりで紀貫之風の女手(仮名)を習得し、数多くの作品を生む。この一環となった東京コンテンポラリーアートフェスティバルでブースを埋めた、幽霊画を着物や帯に描いたものをさかもと未明が買い上げたところから個人的な交際が始まる。今は、大仕事のため京都住まい。ときどき、女人の肌に墨絵を描くため、こっそり出かける。

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